上ばかり見て、下に思いやりがない

受け身君は、周囲に対してとても適応がいい。みんなにも好かれている。いつもニコニコしている。腹が立っても、ニヤニヤする以上に怒りを表にあらわすことはない。だから、入社してから人と争うことも喧嘩することもない。お得意さんともうまくいく。「受け身君に任せておけば万事うまくいくよ」、そんなふうにみんなも思っている。

しかしときどき受け身君は、何か自分の自分らしい気持ちがどこかにいってしまっているような、むなしさとか空虚感を感じることがある。「どうして自分は、こんなに人の気持ちばかり気にして暮らしているんだろう」などとハッと気がつくことがある。どうやら、このような精神状態は。過剰適応の状態だ。受け身君の中に、過剰適応の兆候かときどきあらわれることがある。

受け身君のような暮らし方をしていると、自分の性格そのものについて悩むときがくる。それは、もっと自分らしく。自分の能力を発揮したり、自己主張したいと、彼が思う年頃になったときだ。「会社の中でも自信がついたし、みんなの評価も高いし、これからはただの受け身じゃなく、もっとしっかり積極的にやっていこう」、そう思う気持ちと、「まだまだ周りとうまくやっていかなくちゃ」という過剰適応心理が交錯する中で、彼の中に、いままで自分が空虚だったという意識か芽生えてくる。ここから先は、すでに「適応がよすぎる困った人たち」述べた過剰適応に話をつなげてほしい。

— posted by Azuma at 12:11 pm  

腹が立つのを我慢してニヤニヤ笑う

そんなふうに、いつもニコニコして課長の言うとおりにやっていたとしても、いくら受け身君でも、ときには腹が立ったり、文句が言いたくなるときもあるのではないか。受け身君には4つのことがある。1つは、すでに述べたように、課長とうまくいかないときの落ち込みである。花子さんは敏感に受け身君の気持ちを察して、ああ、きょうは元気がないなとか、しばらく調子が悪くなるなということがわかる。

2つ目は、自分がよく思われたいと思う相手に、思わず自己主張して、小さなトラブルが起こったりするときである。後でとても後悔して、「僕はどうしてあんなことを言ってしまったのか、いつもニコニコしているはずなのに、きょうはなんで不機嫌でぶっきらぼうになってしまったんだろう・・・」と悔やんで、心の中がうまく収拾つかなくな。

落ち込むと、食欲がなくなり、ときどきめまいがしたりして、何度か内科の先生に診てもらったこともある。そのたびに、「鬱病(うつびょう)ぎみですね」とか、「自律神経失調症ですね」などと言われ、「あんまりくよくよ気にしないほうがいいでしょう」と軽い精神安定剤などをもらう。

3つ目は、ときどき起こる肩凝りや頭痛である。いくら受け身君でも、相手が課長さんであっても、内心「カッ」とするときがある。そういうときも、顔の表情は見るからに腹を立てたというほどにはならないで一言い合いをしながらもニヤニヤ笑っている程度で、薄笑いを浮かべながらブツブツ言う程度である。しかし、内心はかなり腹を立てている。

ところが、そういうときに腹を立てるのを我慢していると、後でてきめんに頭が痛くなる。そしてうちへ帰ると、肩が凝り、ときには背中まで張ったような感じになる。精神分析では、本心と裏腹に、内心腹が立っていてもこヤニヤしたり、場合によると、好意を抱いているような態度や表情をしたりすることを「反動形成」という。

世の中をうまく渡っていくのには反動形成も必要なのだが、受け身君の場合にはこの反動形成のかたまりのような面がある。しかし本当に腹が立ったときに、反動形成してニヤニヤしても、なかなか怒りの感情はおさまらない。このおさまらない感情は、自律神経をとおして、頭痛とか、肩凝りになってあらわれる。こういうときの受け身君の治療法はマッサージだ。最近は即席マッサージ十分間・千円を利用しているが、ときには、花子さんが一生懸命マッサージしてくれる。こういうときには、「いやあ、周りがストレスだらけだし、自分もストレス病だ」などと受け身君もグチを言う。

受け身君の4つ目の問題は、どうしても「いや」と言えない、その受け身的性格のために起こるトラブルである。いやな用事を頼まれたときにも、すぐに「いやです」とは言えないし、本当は別の意見を持っていても。つい周りに調子を合わせてしまう。そのために、後になってみんなと違う意見を言い出したり、内心、自分のホンネと矛盾が起こるので、少し不安になる。そのときは引き受けるのだが、やる気かしなくなることもある。

この場合には、受け身攻撃型のパーソナリティの持ち主とよく似た態度、行動をとることになる。「受け身さんに頼んでもね、調子はいいんだけど。本音のところでいやなときにはなかなかやってくれないし、といって、いつも丁寧でニコニコているから喧嘩もできないし、本当にやりにくいなあ」と言う人もいる。そういう状態が続くと、受け身君はてきめんに頭が痛くなったり、肩が凝ったりする。とにかく攻撃性を外に発揮するのは大変苦手で、弱い面がある。

「こんな上司と仕事したくない」と思ったら考えるべき6つのこと

— posted by Azuma at 11:47 am  

受け身的性格の人は父親から愛されることを望む

受け身的女性的性格について、ライヒはこう語っている。初め、ある男の子が母親を愛し、父親と争うエディプス・コンプレックスの状況を迎えた。エディプス・コンプレックスというのは、男の子は母親を愛し。母親をめぐって父親と闘う、つまり父親と競争し、父親に打ち勝とうとする心理をいう。女の子であれば、同じようにお父さんに愛されたい。そのぶん母親と競争する、そういう女の子の心理をいう。

ところが、受け身的女性的性格の人は、この父親との闘いを放棄して、むしろ父親からかわいがられたり、愛されたりすることを、母親とのかかわり以上に重んじる性格の持ち主である。

あるとき、父親が非常に厳しく、息子を叱った。それは彼が、母親のベッドにもぐり込んで甘えている場面を発見したときだ。「もう二度とこんな子供っぽいことをするのはやめにして、大人にならなきゃだめだ」と父は言った。しかし、そのときの父親はけっしてただ折檻(せっかん)したり、怒ったりするのではなく、とても愛情に満ちた、息子をかわいいと思う表情をあらわにしていた。

そのことを男の子が感じたあたりから彼は、母親に愛されたり、甘えることをやめたかわりに、今度はお父さん、お父さんとなつき、お父さん子になった。それにお父さんにかわいがられているほうが安全だ。そのほうが頼り甲斐があるし、しっかりしているし、「やっぱりパパのほうがママよりも頼りになるんだ」、そんなふうに思うようになった。

こんなふうに男同士の闘いを放棄して、むしろ父親的な男性に愛されることで心の安定を得、その上でいろいろな人間関係を発展させていく、こういう心のメカニズムを身につけた男性が受け身的女性的性格者である。

— posted by Azuma at 06:03 pm  

上司に尽くす受け身君

職場で上司と語り合うとき、仕事か終わってから一杯飲むとき、いろいろな仕事上の悩みやこれからの計画を話し合うのが、受け身君には一番の楽しみだ。「支店長もぼくをかわいがってくれる、話し相手にもしてくれる」と満足する。また、同僚、先輩とも突っ込んだディスカッションをして、いまの不況をどう乗り切るかなどと語り合う。みんなとしっくり話し合ったときには、心が何となくすっきりして、昼間のストレスも解消したという気持ちで家に帰る。

ところが、これがうまくいかないときもある。課長と何かぎくしやくして、「きっと課長は、あのとき気を悪くしたなあ、どうしてかなあ」などと思うときには心が暗く、家に帰る足取りも重い。家に帰っても元気がない。妻の花子さんが、「また、課長さんとうまくいかなかったの?」と尋ねる。

「課長、あんなにぼくが一生懸命やったのに、認めてくれないんだよ・・・」

「あなたにとって課長さんはまるで恋人みたいね。いつも課長さんのことばかり考えて、細かく気配りして尽くすし、仕事も一生懸命やって、よい評価を得ようとしているのに、どうしてときどきこういう食い違いが起こるのかしら」

「きょうは課長、少し機嫌がよくなかったからじゃないかな」

「あなたの気持ちはまるで課長さん次第というところがあるわねえ。いったい、私はどうなってるのかしら・・・」

こんな会話が花子さんと受け身君の間にはしばしば交わされる。

花子さんは内心、「受け身君はあれでも男なのかしら。いつもいつも、課長に愛されているかどうか、評価がいいかどうかばかり気にしている。その次は、部下に評判がよいかどうか。私とのことなんか二の次の三の次なんだわ!会社のみんなに好かれて、愛されて、”いい人だ”と言われることが人生の目的のすべてみたい」と思う。たしかに、受け身君は会社にいると本当に細かく気をつかう。

「いやぁ、こういう話を聞いたよ。この間、行った料亭の女将に、”お客さんからお冷やが欲しい、おしぼりが欲しいと言われてからおしぼりを出したり、お冷やを出したりするようじゃ、この商売つとまらない。お客さんがそろそろお冷やか欲しいと思ったころには、ちゃんとお冷やが出るし、もうそろそろおしまいというときには、おしぼりが出てくるというふうに、一つ一つお客さんの身になって感して、一歩先、一歩先ができるようじゃなきゃ”って言われたけど、僕だってそのくらいの気持ちで課長に仕えなきゃだめなんだ」と、受け身君は本気で思っている。

「それじゃあ、あなたはまるで課長さんのオフィスワイフみたいじやないの」たしかに受け身君にとって、異性愛は課長との同性愛の二の次であるプ課長とうまくいっていないときには、奥さんとの夫婦生活も元気がない。

「きょうはあなた、どうしたの?」

「ウーン、いざ二人になって、こういうふうになってみても、昼間の課長の一言か気になってね。あれはどういう意味だったのかなって考え出すと、元気がなくなっちゃうんだよ」

「まあ・・・」

このようなタイプの男性を「受け身的女性的性格」と呼ぶ。これまでの日本の会社人間のかなり多数の人たちは、受け身的女性的性格の持ち主である。受け身君はその代表的人間である。

「あれでも、受け身君、ときどき無理難題を言っている課長に腹が立ったり、内心、反抗心を抱いたりするんだろうか?」と、同僚たちは一杯飲みながら噂している。でも、受け身君にしてみると、争ったり、反抗したりする前に、どうやって相手の言うことを聞き、そのとおりにできるかで頭がいっぱいになってしまう。とにかく受け身君の課長に対する気持ちの向け方、態度は、本当に丁寧で、気配りにあふれている。

「でも、受け身君みたいでなきゃ、とても会社人間は勤まらないというのは本当かもね。受け身君、そういう意味では上司の評判は上々だしね。上の人からは、”あいつはよく気がつくし、先輩思いだし、礼儀を心得ているよ。やっぱり、わが社を支える人間はああいう人間でなきゃ・・・”という声もあるし」

上司にしてみれば、受け身君は何でも「ハイハイ」と従順だし、上司の理不尽な要求にもニコニコして応じる。とにかく彼の生活は上司の気持ち次第だ。課長が「日曜日、ゴルフに行きたい」と言えば、花子さんとの外食の約束などはたちまちキャンセルになってしまう。残業のない日の夜も、花子さんが、きょうはうちで夕食ができると喜んでいたのに、「ちょうどいいから一杯やろう」と課長に誘われれば、ニコニコついていく。

むしろ、そういうときに自分に声がかからないで、みんなが行ってしまったりしたのを知ったら、彼は家に帰っても少しも面白くなく、ご飯もおいしくなくなってしまう。花子さんも最近はそのコツを心得て、とにかく課長さんに仲良くしてもらえれば、あとは元気になって調子もいいんだから・・・と考えるようになった。

— posted by Azuma at 02:15 pm  

人のことばかり気にする人「いつもニコニコ従順な受け身的性格」

受け身君は、上司にとても評判がいい。何か文句を言われてもいつもニコニコして気にとめない。とても素直だ。何を頼まれてもイヤとは言わない。同僚や仲間とのつき合いもなめらかだ。

しかし、職場、とくに上司にすべてを捧げていないといられないこの受け身君の気持ちは、下の人間から見ると、「何だ、上ばっかり見ていて」という不満になる。妻からは、「あなた、課長さんと結婚したら」と皮肉を言われる。しかし、この受け身君のようなタイプは、会社人間としては一番適応のよい、みんなとうまくいくタイプである。

— posted by Azuma at 11:31 am